【HSP|ROYAL INSIDE|序章】ROYAL認定競走が必要とされる絶対的な理由

【HSP|ROYAL INSIDE|序章】ROYAL認定競走が必要とされる絶対的な理由

2024年3月。
半年間の組成休止から施行再開を実施するにあたり関係各位に今一度「ROYAL認定競走(馬事生産振興密約競走)」について「前提」を共有させていただきたく、筆を採らせていただいております。

おおよその関係各位の皆様にはほぼご理解いただいていることと存じますが、昨年までと違い本年の提供につきましては、株式会社HSPのROYAL認定会員様も含まれているということから、改めてこの前書きを公表させていただく次第。

改めまして、馬事生産振興会にて専務理事を務めさせていただいております、「河野匡洋(こうのただひろ)」と申します。
昨年同様、私河野の方でこの特別限定コラム「ROYAL INSIDE」の執筆を任されておりますので、改めましてよろしくお願い申し上げます。

さて、ROYAL認定競走こと【馬事生産振興密約競走】とは、読んで字のごとくではございますが、

「馬事産業界における永続的振興のために生み出された苦肉の策」

ともいえる案件であると「敢えて」この冒頭に申し上げさせていただきます。

Blood Sportsと言われる競馬を中心とする「馬事産業」において、全ては「血統書」に裏打ちされた「価値の売買」こそが産業の肝。

その価値の売買の根底にあるのが「競走馬のレース成績」であることは言うまでもございません。
まさにその「因果の積み重ね」で価値を連綿と創出してゆくことこそが、競馬の本質であるわけですが、その競馬こそ過去から今に至るまで

「人の手が様々な個所に介入してきているということ」

を最初にご理解いただくことが、

【馬事生産振興密約競走の存在を正しくご理解いただくため】

の大前提でございます。

まず、あらかじめ申し上げます。
今回お伝えしたいこととして「競馬のレースにおいていわゆる八百長等を推奨している」といった類の話ではございません。

そうではなく、

「そもそもサラブレッドの存在自体が人の手の介在によって成り立っている」

という事実をご理解いただかねばならないということでございます。

つまり、

「種付け行為はおろか出産を自然に行うことができない」

これが、私共が取り扱うサラブレッドという生き物でございます。

種付けのトレーニング、そして、種付けの介助。
そこから出産はもちろんのこと、その後の育成における「生のすべて」に人の手がかかわっております。

その上で、スタリオンビジネス(種牡馬事業)を頂点とした、三角形のヒエラルキーの中で「血」を中心とした、目に見えぬ「価値」を文化と呼び、馬事産業界はここまで発展してきているということ。

なぜJRAが生産事業に大きく関与せず、牧場/馬主を民間に任せているか。
JRAの仕事はあくまで主催者として「場所を貸す」ことであり、どちらかといえば「プラットフォーマー」の立場。

つまりJRAは「血の領域」には介在していないということ。

これが日本の競馬市場では非常にわかりにくいのです。
馬券売り上げが世界一である背景から、通年で高額賞金が用意され、世界のトップジョッキーたちが日本で稼ぐというスタイルが確立されていることも分かり難さを増幅させているのです。

もちろん主催者側の努力は認めますが、日本の国民性が根底にあってこそ「競馬の繁栄が支えられた」という意味でも、日本の馬券売り上げの高さこそがJRAがヒエラルキーの上位にいると勘違いをさせるわけです。

しかし現実はそうではありません。
馬券売り上げはあくまで「ファンの多さ」に比例するだけの話であり、日本でも、ドバイでも、香港でも、米国でも欧州でも、あくまで主催者は「場所」と「馬券発売システム」を提供するのみ。

もちろんここまで言い切れば語弊も生じますが、それはそれで今は【馬事生産振興密約競走】がどのようなものかを改めてご理解いただく場として、記述しておりますのでその点はご容赦ください。

話を戻します。
つまり、ただの博打の駒ではなく、あくまで「競馬を文化として広める側面」が馬事振興に必須な条件である以上、本来の主役は「JRA」ではなく、

・生産側
・オーナー側

であるということ。

この絶対的な序列は、日本も世界も実は一切変わらないということをご理解いただきたいわけです。

毎回同じ話をして恐縮でございますが、

1.あれだけ賞金額が少ない欧州競馬で

2.なぜGalileoの種付け料が推定6000万円を超える額にまで高騰するのか

種付けした時点で「ほぼすべての馬が回収不能な原価」になってしまうのにもかかわらず、なぜそんな値段がつけられるのか。

全ては

「Blood Status」

のため。

「Blood Status」という言葉を聞いたことがございますでしょうか。

読み方は「ブラッドステータス」となりますので、おおよそは想像がついていただけるのではないかと思うわけですが「血の地位」とも表現できるこの言葉が、馬事産業界にとって「如何に大きな意味を持っているか」が、今回のお話の中心となります。

全ての背景を語れば、この序章一回のご紹介では終わりませんので、簡潔に要点をお伝えいたします。

・ROYAL認定競走=馬事生産振興密約競走

・馬事生産振興密約競走=Blood Status獲得

この構図の象徴ともいうべきが、

英国の「ROYAL ASCOT開催」であるということ。

イギリス王室主催の「Royal Ascot Race Meeting」がまさに、馬事生産振興におけるロールモデルであり、競馬発祥の地にて連綿と続いた「一つの儀式」のようなものが、まさに【馬事生産振興密約競走】の原点のようなものといえるわけです。

そもそもなぜこの「ロイヤルミーティング」には以下のような観戦規約があるのか。

「カメラ撮影及び、カメラを手に持っての行動禁止」
「携帯電話の使用禁止(メンバーズ・エンクロージャーのみ使用可)」

ここでその理由を赤裸々に語ることはいたしません。
しませんが「映されては困るもの」がなければそのようなことはしないということはご理解いただけるはず。

その上で、なぜ「映されては困るようなこと」が起こるのか。

欧州、とりわけ英国では「賞金」もさることながら、レースの格に応じた「ステータス」を手にするために活動しているオーナーばかりであるという事実。

この事実が日本と世界の大きな違いであり、そから派生する誤解が「馬事生産振興密約競走」の存在や、必要性への理解を妨げるのです。

「海外オーナーは賞金など二の次である」

つまりそこが目的ではないことがとりわけ「一般競馬ファン」には理解ができないのでしょう。

日本の馬事産業界では「クラブ法人」なども盛んに広がっており、POGといった疑似馬主体験ゲームなども行われているからか、

「血の持つ価値」

の本当の意味や、その持ち主に対しての「ステータス」が軽んじられている傾向にあるのも事実。

そもそも、世界に名だたる「格式の高い血」を受け継ごうと思えば、種付け一つとっても「誰にでも種付け権利が販売されるわけではない」のが世界であり、そしてこの考え方自体が「馬事産業界の常識」なのです。

そして実際にこの「常識」が、日本でも長らく馬事産業の根底を支える考え方として連綿と続いているのです。

さて話のスケールが広がりすぎているので、もう少し話をフォーカスしていきましょう。

そもそも何を申し上げたいか。

自由競争が行われる資本主義社会において、それが人間同士の戦いであればまさに弱肉強食であり強者と弱者にその「結果」は振り分けられ、弱者は自然と淘汰されていくのが自然の摂理。

そもそもが「自由な営みの上に生がある」からこそ、この摂理は当たり前であり、それこそが人間の本質でございます。

しかしながら、そもそも「人の手が介在しなければ生すら危ういサラブレッド」が馬事産業界の主役である以上、それは「自然の摂理」とは切り離された世界であり、そこには「恣意的な摂理」が成り立つわけです。

つまり、競馬においては、生産の局面以外にも様々な局面で、

「人の手の介在が起こること」

が必然であるという事実。

それが、自然の摂理や競争原理に反していても、

・馬事生産界の持続可能性
・利権やステータスの持続可能性

を上げる以上、そして、そもそもの根底が「そういう成り立ち」から始まったのが競馬である以上、

【馬事生産振興密約競走】

は、無くならないのはもちろんのこと、このように現代競馬でも連綿と遂行されてゆくということ。

そして、この存在を知る我々は、その成り立ちに敬意を表して、

【ROYAL認定競走】

と、この「行為」のことを呼ぶのです。

これは決して、苦肉の策、必要悪ではなく、馬事産業界の存在に組み込まれている行為であるということ。

本日はここまでとさせていただきます。
今週末の「金鯱賞」が、いわゆるROYAL認定競走に選ばれた理由や、その背景に関しては、今週末から始まる

ROYAL限定コラム【ROYAL INSIDE】

の中で少しずつ語らせていただきます。

最後に申し上げます。

ROYAL認定競走の存在を「知る立場」になったこと。
それは「馬事産業界では常識でもある【人の手の介在】をより濃く意識できる立場」であると言い換えられるわけです。

馬事産業界に「ROYAL認定競走」が存在することで、様々な組織の意志の向かう先が一つになるという意味でも、この半年間の施行休止期間に様々な不具合が馬事産業界に起こってしまったことの理由も、見えてくるのではないでしょうか。

因果関係というものは時として「非常に見えにくく」なってしまいます。
これは、馬事産業界のみならず、日常の様々な営みの中でも多くの方が混迷しております。

目の前で起こる相関関係でしかない事象を「それが因果だ」と誤解されている方は非常に多く、その理解では何も解決しないという状況の中、盲目的に意思決定をされることを見るにつけ、いたたまれなくなってしまうのが正直なところでございます。

なぜその結果になるのか
なぜその馬が勝利したのか

その「因果」を明確にすることができるのが、まさに、

【ROYAL認定競走】

であるということ。

改めて週末のコラムを楽しみにお待ちください。

馬事生産振興会
専務理事 河野匡洋